聖人が、チラッとあたしに向かって流し目をする。
『あのな、俺と“魔羅威夜”のアタマの京谷 龍二(キョウヤ リュウジ)は、以前から知り合いだったんだ。
京谷は“魔羅威夜”に入るコトを勧めてきたが、俺は断った。
俺、族に入るのが嫌だったし。
バイクは好きだから乗ってるワケじゃん?!』
『う‥‥うん。』
『その後も何度か京谷に誘われたけど、俺はずっと断り続けてきた。
だから今回、まさか女のコトでヤツともめるとは思ってもいなかったぜ。
つい最近、久々に街で会ったトキ、いきなり言われた言葉が“俺の女に何ちょっかい出してんのよ?!”だぜ?!
もちろん、俺は青山にちょっかい出した覚えもねぇし、
出すワケないじゃん?!』
『うん。』
『その日は、それで治まったけど、
さっき、また街で偶然、京谷と会っちまってよ。
いきなり殴りかかって来たから、俺も殴り返した。
京谷が言うには、青山は俺のコトが好きらしい。
知るかよ、ンなコト。
それで、
京谷は俺のコトが、青山は‥‥‥奈央、オマエのコトが気に入らねぇんだと思う。』
青山さんが聖人のコトを好き‥‥‥?!
でも、
そんなの逆恨みだよ‥‥‥。
青山さんも‥‥‥
その、
京谷さんてヒトも‥‥‥。
『だから青山さんは‥‥あたしと聖人の仲を引き裂こうとして、
図書室に聖人と3年の女のコを呼んで、くっつけようとしたってワケね‥‥‥。』
『おぅ。今の所、言えるのは大体そんな所だ。』
聖人が暴走族のアタマと交流があったなんて‥‥‥。
もちろん初めて聞いたし。
凄く驚いた。
だって、
あたし達、
まだ中学生だし。
聖人は無免でバイクに乗ってるワケで。
怖いよ。
なんか、
あたしの知らない聖人の世界が、
またどんどん広がっていく様な気がして。
聖人が、
どこか、
遠くへ行っちゃう様な気がして。
せっかく、
聖人のコト、
近くに思える様になったのに。
あなたは、
また遠くへ行ってしまうの?!
そんなの、
嫌だよ‥‥‥。