「あ…ありがと」
ミユキはお礼を言った。
「さっきの風呂代のお返しさ。営業時間外だったのに、払ってくれたしな」
マモルはそう答えた。
ミユキは嬉しそうに白い花束を抱きかかえると、優しく香るその花の匂いを、いつまでも嗅いでいた。
「ところで、ミユキはこれからどうするの?」
マモルが聞いた。
「ううん。何も決めてない」
「じゃ、泊まる場所は?」
「それも全然…アタシ、今朝この町に来たばかりだから」
ミユキは言った。
「それじゃ、俺のアパートで良かったら泊まってけよ。狭くて汚い部屋だけどな」
マモルがそう言うと、ミユキは
「ホントにいいの?そうして貰えると、助かるな」
と言った。
「もちろんさ。それに、二人で一緒に風呂に入った仲だしな」
マモルが笑いながら言うと、ミユキは顔を赤らめた。
「まだ少し休憩時間あっから、今のうち今晩のメニュー考えよっか?ミユキは何が食べたい?」
「ぇと…そうだなぁ…あ、鍋が食べたいかも知れない」
「オシ!それじゃあ、今晩は鍋で決まりだ。美味しい食材を一緒に探そうぜ」
「うん!」
ミユキは屈託のない笑顔を見せながら、マモルと並んで歩いた。
……そして、少し歩いた通りの一角に、問題の場所はあった。