その表情とヒョヌの声から、
「ああ、そうだな。今日は荷物と一緒にやって来て、疲れてもいるだろうし、じゃ、明日にするか」
とチニが言った。それに対して、
「ええ、明日ぁ」
と、2人のやり取りに不服そうな声をあげたのはチヒョンである。そして更に、
「いいじゃない。荷物があっても。別に気を使う仲じゃなし」
と言う。
「でも、今日はチニの言う通り、少し疲れてもいるんだ。チヒョン。明日にしよう。今日、付き合わないお詫びに、明日、僕が腕を振るうからさ」
「分かったわ...」
「じゃ、ヒョヌのマンションも見たことだし、そろそろ帰るか」
「え、もう?」
またしてもチヒョンが不服そうな声で言ったが、チニが
「ヒョヌは疲れているし、実は僕も疲れているんだ」
「ん、もう」
チヒョンはふくれっ面になったが、チニが帰るというのに、自分だけ残るわけにもいかないので、一緒に帰るしかないと諦めたらしい。
「あ、じゃ、送るよ」
と言ったヒョヌの言葉に、
「じゃ、私、助手席...」
言いかけたチヒョンの言葉をチニが遮って、
「いいよ。いいよ。タクシーでホテルまで行くから」
と断った。その言葉に完全に怒ったチヒョンはソッポを向いている。が、2人ともチヒョンの機嫌の悪さなど気にも留めずに
「じゃ、車の拾えるところまで」
とヒョヌが言い、チヒョンも仕方なくバックを手に取り、3人で歩道橋の向こう側のタクシーが拾えるえるところまで行った。
タクシーはすぐに拾うことができ、ヒョヌはチニとチヒョンに明日の約束とお休みを言い、タクシーが走り出してからも立っていたが、タクシーが見えなくなるとマンションに帰るために、歩道橋を上って行った。
ヒョヌの後には、女性が1人。小柄で髪の長い人のようだが、別に気に留めることもなく歩いて行く。そして、階段を下りてしまった時である。そんなヒョヌに、思ってもみなかった衝撃が襲いかかってきた。いきなり。何が落ちて来て、ヒョヌにぶつかったのである。ヒョヌは最初何が起こったのか、すぐには分からなかった。ヒョヌは自分の上に乗っているのが、後ろを歩いていた小柄で髪の長い女性だと知ると、ビックリした顔になり、更に、その女性に意識がないことを知ると、驚きはもっと大きくなり、抱きかかえて、
「君、どうしたの? しっかりして、君ぃ」
と叫んでいた。