エリザベスドール?(8)

ぐうりんぼ  2008-11-18投稿
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 夜…

 バーソロン邸は静かな雰囲気に包まれていた。

 応接間の中央辺りに置かれた大きなテーブル。

 その上に、奇妙な模様の赤い布がテーブル一杯に広げられている。

 テーブルの四隅にはそれぞれキャンドルが置かれ、火が灯される。

 黒いローブを着た老婆が1人、テーブルの前に置かれた椅子に腰を降ろした。

 教典を広げた老婆。

 手に十字架を握り締めたまま、祈祷を始める。

 アースルはテーブルから少し離れた場所に立っていた。

 老女祈祷師…セディ・ワトフの交霊儀式を見ているのだ。

 果たして…

 娘ジーナの霊は現われるのだろうか?

 人形騒動は治まった。

 後は…、

 この世を彷徨うジーナの魂の救済だけである。

 愛する娘が天国へ旅立って行かなければ…

 全ては終わらないのだ。

 時間は夜の11時近くを回っていた。

 風もないのに、キャンドルの火が揺れ始める。

 アースルの背筋に悪寒が走り始めた。

 何かの気配を感じたかのか…

 セディは祈祷を中断して、目を閉じた。

「来たようだね…」

 アースルは固い表情で辺りを見回す。

「どこに、いるんだ!」

「アースル、お前さんの方から呼んでごらん」

「ジーナ! ジーナ!
 どこにいるんだジーナ!?」

 セディが一緒になってジーナに呼びかける 。

「ジーナ、いるんだろう? 姿をお見せ」

「ジーナ!」

 すると…

 部屋の大扉がゆっくりと開いて、人型の半透明の物体が姿を見せた。

 まぎれもなく、人である。

 ゆっくりとした歩調で、こちらへ歩いて来る。

 ヘヤースタイル、顔の輪郭、体型…

 ジーナそのものである。

 物体は段々と、姿をハッキリとして来た。
 セディは立ち上がり、物体へと歩み寄った。

 相手に向かって手をかざしながら。声をかける。

「ジーナ・バーソロンだね?」

「ハイ…」

 ゆっくりとした口調で答えるジーナ。

 生きていた頃と同じ声にアースルは懐かしさを感じた。

 セディの質問は続く。

「今までお前は、どこで何をしていた?
 今から10年前に亡くなったから…本来なら今頃、神の元にいるハズだ」

「…」

「なのにこうして、アタシら前に姿を見せた」

「…」

 アースルが口を挟む。

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