「ずっと、エリザベスに憑依してたのだろう?」
「ええ、そうよ」
ジーナ、初めて質問に答えた。
「そして…、ルーク・ハリーと言う青年を愛したのだな?」
「彼は、私の人形を大事にしてくれた。だから私…彼に感謝したの」
「その感謝の気持ちが…、段々と愛する気持ちに変わっていった」
「彼って、とても素敵だったから」
やはり…
アースルの思っていた通りだった。
人形が動くキッカケとなったのは…
ジーナ自身のルークへの強い思いによるものと、確信強く恋心を抱くようになったからだと想像していたからだ。
アースルは質問した。
「あの男に対するお前の気持ちは…、今も変わらないのかな?」
「変わらない。今でも私、ルークを愛している」
今でもジーナは、ルークへの思いが強かった。
それそれで、悪い事ではないが…
「だからと言って、何の関係もない人間を殺してもイイって理由には、ならないだろう。
ルーク・ハリーはお前のせいで、今でも辛い思いをしているんだ」
「…」
ジーナは何も言えないようだ。
セディが口を挟む。
「お前のやった事は、神の裁きを受けるに等しい行為だよ。分かっているのかい?」
「どんな裁きでも受ける覚悟はあるわ」
まるで悟り切ったような態度。
だがそれは…
アースルにとっては、納得のゆくものではない言い方である。
「忘れろ、何もかも。
あの男の事も、エリザベスの事も全てをだ。
お前はもう、この世界に踏みとどまる事は出来ない」
ジーナ、しばらく考えて…
「ルークの事だけは、忘れたくないの」
「だったら向こうで、あの男を見守ったらイイ」
「…」
「私の言う事を素直に聞くんだ」
「お父様…」
「死んだ母さん…
(妻サラー。5年前の屋敷の火災で死亡)
が、向こうで、お前を待っているだろう」
「お父様…」
「我が娘よ…
(目に涙をためながら)
今度こそが、本当の別れだ」
すると…
セディは手に持っていた十字架をジーナの前に突き出した。
「迷える魂よ、神の元へ。天に召されよーッ!」
光を放つ十字架。
ジーナの体は黄金の光の粒子に包まれてゆく。