「午前中」「昼過ぎ」「もうすぐ」「着いた」
翌日彼が帰ってきたのは15時を過ぎた頃だった。
部屋に入ってくるなり抱きつく。
逢いたかった
彼女が日本にいない間に、逢える間に、せめて目の前にいたかった
「寂しかった?」
深いキスをして、開口一番彼が言った。
「また泣いて…
お前は〜もう〜しょうがないな〜
……おいで?」
ベッドへと導かれる。
涙は止まらない
あたしのためのセックス
彼にはもう必要ないセックス
なのに彼が欲しい
キスしながら「ん?」と微笑みながら服を脱がせていく彼。
一気に涙が溢れた。
「どしたん?
ちゃんと聞くから言うて?」
言ったらあなたは否定してくれる。
裸のまま涙ばかり流しているあたしを引き寄せ頭をなでる。
「なに?」
「あなたの身体が変わった」
「え?どこが?」
気づいてないのだろうか
とぼけているのだろうか
じっと顔を見つめ、両手で顔を挟んでキスした
大好き
また涙が溢れた
「今からするセックスはあたしのためのセックスで、あなたにはもう必要ないセックスなんでしょ?」
「何なに、なんで?
そんな事なぃって!
オレにも必要やって」
「あたしが
2人の邪魔になってる事はわかってんねん!
あたしがおらんかったら全部うまくいくねん!
苦しめてんのわかってんねん!」
また泣きじゃくっていた
あたしはズルい
あたしはあたしがズルい事をしていると思った
ヒロインぶってるのかと思った
けど言わずにいれなかった
我慢できない
ハッキリ聞きたかった
本人から確認しておかないと妄想がどんどん加速して狂ってしまう
重症だ……
「あのな?」
今度は彼があたしの顔を両手で挟んだ。
大きな手。
あたしの大好きな、彼女も大好きな指。
今はあたしに触れている
彼女はこの切なさを知らない
そう思った
「美保がそう思ってまうのはわかる
けどな?」
彼はそこまで言ってゆっくりキスをした。
軽いキスと深いキスと
「邪魔じゃない
ホンマに。
な?
考えて?
こんなにオレの事想ってくれてる美保を
こんなに可愛い子をすぐに要らなくなれる訳ないやん」
おでこをつけたまま、眉間にシワを寄せて、彼が苦しそうに笑っていた。
「だって…
好き過ぎて、苦しくて、でも離れたくないから」