「やっと到着かぁ」
と、嬉しそうに声をあげた男は、久し振りに火星の自宅に帰ってきたのでございます。
光速シャトルは、減速を繰り返し、火星のターミナルへと、到着し、ターミナル検閲所の検査が終れば、久々の我が家へと、男の顔は、自然に笑顔へと成ったのでございます。
「一寸待って下さい。」と強い口調の検閲官に男は、呼び止められ別室の検査室へと連行されたのでございます。
「何か、違反な物でもあったのか?」
「いえ、貴方は光速シャトルから降りて来られたのですがね…搭乗者名簿に貴方の名前が無いのですよ。出発した冥王星第三惑星シモンターミナルにも、出国名簿も無いのですよ。」
その時コンピュータが答えを出してきた。
光速移動中は、時間が最大限に伸ばされ、時間が停止します…その時誰にも悟られず、侵入出来るのは…
コンピュータは、答えの続きを出してきた。
その男の正体は、コンピュータで創られた幻です…
「なんですって…」
息を飲む検閲官の前で、男はコンピュータに向かい、話掛けていた。
「お母さん、ただいま帰りました。」
男の姿は、電波映像がブレルかの様に、消えてしまったのでございます。