漁村

木村憲爾  2008-11-18投稿
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海が荒れている


空は雲一つ無い快晴



海猫が一羽、鳴いている


村人たちは漁の準備している


男が一人立っていた


男はこの村の出身だった

15年ぶりの故郷


「親父が死んだ。葬式は10月3日だ。」

弟の電話で父親の死を知り、15年前に捨てた故郷に帰って来た


男は電話を受けた後、悩んだ。しかしこの期を逃せば一生母親の墓参りが出来なくなると思い、覚悟を決めた


「何もかわらないな」


15年ぶりの故郷も男にはさほどの感慨を湧かせなかった


海猫が一羽、木に留まっている


「15年前と何もかわらないだろう」

不意に、後ろから声がした


背の大きな、不健康に痩せた男が居た


弟だった


「亮二か」


「久しぶりだね、兄さん。もう帰って来ないんじゃなかったの?」

弟は意地悪く笑いながら言った


「お前が呼んだんだろ」

「誰も来てくれとは言ってないよ。」

「そうだったか。」

言い返そうとしたが止めた


「まぁ、来たからにはもてなすけどね。行こう親戚の方々がお待ちだよ。」

二人とも家までは無言だった。


15年ぶりの家。


海猫が一羽、鳴いている。

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