海が荒れている
空は雲一つ無い快晴
海猫が一羽、鳴いている
村人たちは漁の準備している
男が一人立っていた
男はこの村の出身だった
15年ぶりの故郷
「親父が死んだ。葬式は10月3日だ。」
弟の電話で父親の死を知り、15年前に捨てた故郷に帰って来た
男は電話を受けた後、悩んだ。しかしこの期を逃せば一生母親の墓参りが出来なくなると思い、覚悟を決めた
「何もかわらないな」
15年ぶりの故郷も男にはさほどの感慨を湧かせなかった
海猫が一羽、木に留まっている
「15年前と何もかわらないだろう」
不意に、後ろから声がした
背の大きな、不健康に痩せた男が居た
弟だった
「亮二か」
「久しぶりだね、兄さん。もう帰って来ないんじゃなかったの?」
弟は意地悪く笑いながら言った
「お前が呼んだんだろ」
「誰も来てくれとは言ってないよ。」
「そうだったか。」
言い返そうとしたが止めた
「まぁ、来たからにはもてなすけどね。行こう親戚の方々がお待ちだよ。」
二人とも家までは無言だった。
15年ぶりの家。
海猫が一羽、鳴いている。