エリザベスドール

ぐうりんぼ  2008-11-19投稿
閲覧数[499] 良い投票[0] 悪い投票[0]

 アースルの顔を見つめたまま、涙を流すジーナ。

 ゆっくりと、消滅していった。

 シーンと、辺りは静けさを取り戻した。

「セディ婆、娘は?」

 ずっと厳しい表情だったセディの顔がほころんだ。

「安心おし。神の元へ行った」

「そうか」

 安堵するアースル。

 近くのガラス棚の上に飾ってある写真立てに視線をやった。

 アースルとサラー、ジーナの3人の家族写真が入っているのだ。

 亡き愛妻・サラーを見つめる。

「妻よ…、娘を頼む」

 セディが話しかけて来た。

「人形は、どうする?」

「引き取って、焼却するつもりだよ」

「その方がイイ」

「これで、全てが終わったか」

 アースルの安堵の表情とは正反対に、セディは表情を曇らせた。

「だとイイんだが…」

 ────────

 同じ頃…

 警部モグレ・ルワッソは1人、国立スーツ大学・4号研究棟に足を運んでいた。

 第2資料保管室で、同校・助教授ヒース・ローデンとの打ち合わせが終了して、一息付く。

 打ち合わせを済ませたヒースは部屋を出る。

 エリザベス人形に関する研究と調査が終わり次第、人形をアースルに返却する事を約束したのだ。

 警察特殊部隊の砲撃を受け、バラバラに砕け散ったエリザベス…

 破片は全て回収された今は、この部屋の片隅に置かれたガラスケースの中。

 底板一杯に敷き詰められた脱脂綿の上に、元の形通りに並べられている。

 部屋に1人残ったモグレ…

 ケースの傍に歩み寄り、中の人形をまじまじと見入った。

 破片1つ1つをジックリと見ても…

 やはり、単なる作り物にしか見えない。

 作り物なのに…

 まるで生きているかのように、不気味に動き回っていた光景が今でも目に浮かぶ。


i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 ぐうりんぼ 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ