約束だよ 終"

りこりす♪゙  2006-06-18投稿
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君は,君だけの扉をくぐるのに一歩踏み出した。
僕にとって,何万歩より距離のある一歩。
もう少し早く君の家に迎えに行けばよかった,と少し後悔した。
そうすれば,もう少し長く一緒にいれたから。

僕らはただ,見つめ合っていた。


───♪♪♪

響くベルが最後を告げる。

「ねぇ」
「ん?」
「約束だよ。必ず,いつの日かまた会おう」
「…うん」

もう一度プシューと音をたてて,固い扉が閉まった。
電車が,重たそうな体を少しずつホームから離し始める。

突然,僕は走りだすと柵を飛び越えて自転車にまたがった。
線路沿いの下り坂を,風よりも早く飛ばして。
君に追いつこうと精一杯電車と並ぶけど,やっぱり少しずつ離されてく。
追いつく訳がない。
離れてく君に見えるように大きく手を振り,いつまでも電車を見送った。


下り坂。
古くなったタイヤが悲鳴をあげながら,残された僕の体を運んでいく。
静かだった街にはいつもの活気が戻り,朝よりも賑やかになった空気が僕を包んだ。
それでも,君がいないと世界中に一人だけみたいな気がして,またため息が零れる。

「約束だよ…」

今度はもっと早く迎えに行くから。

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