確かにこの頃の猛は私しか見えていなかった。
半同棲みたいな生活になっていた。部屋は猛の物が増え、洗濯物に男物を干すようになった。
猛がタバコを吸うからライターと灰皿も部屋には当たり前の様に仲間入りした。
一緒にいる時間は決して彼女と連絡をとらない。
マナーなのかもしれない。
そんなある日、私は猛が何故彼女と別れないか知る。
きっかけは二人で映画に行く約束をして私達は外で待ち合わせた。
猛は意外と時間にルーズじゃない…だけどその日は待ち合わせ時間になっても猛はこない…連絡もない。
しばらくすると猛の友達と名乗る人から電話がきた。
その内容に私は驚いた。
猛の彼女が自殺未遂をおこした…
だから猛は病院に行っているので来れないということだった。
私は目の前が真っ暗になった。自殺未遂…考えもしなかった。
いてもたってもいられなかったがとりあえず、家に帰った。
自分という存在が彼女をそんなにも苦しめていたなんて…
罪悪感に打ちのめされる。自分のしていることに考えさせられた。
深夜に猛が帰宅した。
猛の顔は疲れきっていた。
聞きたいことは沢山あったけど私達は何も話さず、朝を迎えた。
[75] 
[0] 
[0]
