僕は、人を殺してしまった。
嘘だろ?
僕が殺人犯?
間違いない。
殺したこと、遺体をバラバラにしたこと、そして埋めたことまではっきり覚えている。
いや、思い出したんだ!
今まで忘れてた。
自分が人を殺したこと。
人を殺したことを忘れる?
そんなことあり得るのか?
でも僕は間違いなく殺人を犯した事実をすっかり忘れてしまっていた。
つい先月の話なのに。
でも思い出してしまった。
思い出したとたん、警察に見られるのが怖くなった。
見られたら捕まるかもしれない。
殺人は完璧なはずだ。
それでも万が一自分が犯人だと分かってしまうのが怖い。
白バイだ。
止められた。
これはもうダメなパターンだろう。
あれ?
大丈夫だった。
なんとか家に帰れそうだ。
家に着くと珍しく家族全員が揃っていた。
まるで自分の人生のシナリオが誰かに仕組まれてるような気がした。
僕はきっとすぐに捕まるのだろうと悟り、家族に自分のしたことを話した。
母親には出ていけと言われ、父親には「昔からお前は変なやつだと思っていた」「気持ち悪いよ」と言われた。
僕は、自殺か逃走のどちらかの選択に迫られた。
(つづく)