如月加夜と他ふたり

神山  2006-06-18投稿
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暑い。蝉が鳴かぬのが可笑しく思える様な日が続く。暑い。扇風機はものの役に立たず、アイスクリームは存分に食い散らかした。暑い。もう駄目だ。そんな訳で、今年はじめてクーラーを点けることにした。クーラーは良い。真冬のコタツ、真夏のクーラーと呼ばれるだけの事はある。ひと度リモコンを押そうものなら忽ち依存症で家から出られず毎年からだを壊すクセにそれが解ってる筈なのに設定温度を下げまくる位わたしはクーラーが好きだ。ああ今年もそんな季節に成ったんだ等とコンセントを差し込む午後三時である。稼働ボタンを斜め上に差し出し狙いは長方形の本体だ。リモコンを押す。無反応な反応が返ってくる。ふと気付けば、リモコンの電池切れだ。ならさっさとコンビニにでも行けば良いのに、私は家捜しを始めた。あんなアスファルトに蜃気楼な道を高が電池二本の為に移動したくないのだ。捜した。プロの泥棒だとてここまではしないような家捜しだった。まず小物入れは全て逆さまにした。見つからない。次に引き出しを全て引き出した。見つからない。畳の隙間や本棚の陰を箒で掃き、果ては掃除機の塵溜すら引っ掻き回す。見つからない。それでも私は意固地だった。確かに何処かでみた記憶があったのである。電池ニ本は、自転車で近場のコンビニに求めれば五分で手には入る代物であり、だからこそ、私は家捜しを止められなくなっていた。ちょっとした買い物は、友人に頼まれたアニメビデオのダビング並みに私にとって面倒くさいものなのである。全身から汗が溢れ、なにか本末転倒とかそんな言葉が私の瞼に写り始めた時、その細長い円柱を見つける事が出来た。単三電池二本を発見した時、サーフボードに乗るサンタクロースの存在を私はたぶん信じられた筈である。これでクーラーが動く。もう熱気とは別れる事ができる。私は急ぎリモコンをひっくり返した。そして蓋を開きそのまま、玄関に向かい私は靴を履いた。もちろん自転車の鍵を持っている。知っているだろうか?リモコンの電池には単三の他に単四電池を使用するタイプも有る事を。知っているだろうか?私はそんな事しらなかったと言う事を、そして休日の大切な四時間が無駄に流れたと言う事を。今日も暑い。



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