僕はその名前を聞かれた時に違和感を感じた。
確かに聞きなれた名前だが、20年間呼ばれ続けてきた程ではない。
何故だ?
この感覚は一体何だ。
有島健二。
漢字も浮かんでくるし、よく聞く名前だ。
でも何故か自分がそう呼ばれるのは初めての気がする。
やはりあまりのショックで頭がおかしくなってしまったのか。
取り調べが終わったら部屋でゆっくり休もう。
取り調べが終わり、僕は手錠をかけられた状態で部屋まで連れていかれた。
部屋といってもとても狭く、四人寝れるか寝れないかのスペースしかなく、床は畳で、壁は厚く冷たい。
廊下に面した部分は鉄格子に金網だ。
看守には、お茶の入ったコップと小さな籠を渡された。
どうやらこれに自分の荷物を入れておくみたいだ。
大きな荷物はまた別で、ロッカーに入れられる。
籠に入れるのは、便箋に封筒にボールペンや自弁品など。
僕の番号は、16番らしい。
16番又は有島と呼ばれたら返事をしなければならない。
一通り説明を受けてこれからの流れを確認した。
今日はもう洗面をして布団を敷いて寝るだけのようだ。
洗面所に行くと鏡があった。
あれ?僕の顔じゃない!
(つづく)