淳と青山で逢ってから、三日が経った。私から、電話する事は出来なかった。自分から、また電話する・・・。と言った淳からの着信を待つしか無かった。
頻繁に携帯を見て、着信を確認しては、鞄に閉まった。
大学から帰宅しても、この三日間は、何もする気になれず、部屋に籠り放しだった。また、淳が遠くなった気がした・・・。
近付いては、遠ざかる―\r
それは、淳に別れを切り出した日から、ずっと繰り返された・・・。
淳への気持ちは、変わっていなかった―\r
あの日、諦めたつもりだったのに―\r
淳を遠く感じると、その気持ちは、一層、強く感じた。
マナーモードになっていた携帯が、ベットの上で光っていた。
手に取って、画面を見た―\r
着信は、淳からだった。別れた彼女の容態も、気になった。
本当は、逢った事の無い、別れた彼女の事よりも、淳が、ショックを受けていないか・・・。彼女への淳の気持ちが知りたくて仕方無かった。
「はい・・・、あっちゃん?」
「香里?この間は、ゴメンな・・・。お前を置いて、突然、店出ちゃったりしてさ。」
「良いの、そんな事は。彼女の容態は?大丈夫なの?」
「あぁ・・・。手首の傷は浅くて、翌日には、退院して良い事になったんだけど・・・。」
「そう・・・、なんだ。それなら良かったね。気になってたの、三日間ずっと。」
「うん・・・。傷より、精神的にな・・・、かなり不安定なんだよな、今は。だから、俺が傍に居ないと、また何するか分かんないんだ・・・。」
受話器の向こうの淳の顔が想像出来た―\r
彼女の為に何か出来ないか・・・、と悩んでいる淳の姿が―\r
「傍に居てあげて、落ち着くんなら、居てあげた方がね・・・。」
「香里、俺、ほんとは・・・。」
淳は、何か言い掛けて、言葉に詰まった。
「あっちゃん、落ち着いたら電話してくれたら、良いから。じゃあ、ね・・・。」
淳の言葉を聞かずに、一方的に電話を切った。次に出るであろう、淳の言葉を、電話で聞きたく無かった。別れた彼女が、同情だとしても、淳の心の中に居る―\r
この時、暫く私からは、淳に連絡を取らないと決めたのだった。