シンさん

ちょいな  2008-11-20投稿
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 北海道苫小牧市。
 ここに小さな喫茶店を営む男がいる。名は「シン」という自称「伊達男」である。
 「シンくーん、シンくーん?どこにいる…のぉ?」
 キョロキョロとシンを探しているのは、まだ年齢が幼い「アイ」という名の女の子である。
 「シンく…ん?」
 アイが喫茶店内にある座敷の部屋を覗き込む。
 そこには何故か上半身裸でヌンチャクを片手に姿見の鏡の前でポーズをとっているシンがいた。
 「シ、シンく…ん。
 な、なにしてる…の?」
 シンの姿に明らかにドン引きしている感じである。
 「アイ、シンくんじゃない。今の俺はブルース・シンさんだ!」
 アイのいる方向に顔を向けニヒルな笑顔を見せる。
 これでもかという程の白い歯が輝いた。
 「…そのブルース・シンくんは、何をして…るの?」
 「シンさんだと言っているだろ!?
 まったく、最近の子供は泥臭さや汗臭さ、暑苦しさといった美学を知らないのかねぇ!?
 こうやって日々鍛練する事による男…いや漢というのが研かれるのだよ!」
 ビュンビュンと勢い良くヌンチャクを振り回し段々とアイに近づき、ホワチャア!と叫びながらポーズをとる。
 その迫力に驚いたのかドタッと、アイはその場に尻餅をつき今にも溢れてしまいそうな涙目なっていた。
 「だって、そういうの知ら、なかったんだも…ん。
 てっきり、いつも、みたいに、サボってると思っちゃっ…て。
 ご、ごめん…ね。」
 ボロボロと涙が溢れて、アイは塞ぎ込むように丸くなってしまう。
 「アイ?おーい…。
 怒ってなーいよ?冗談に決まってるだろ?
 これはカッコつけの練習で美学なんてねぇよ。
 だって男だからカッコ良くなりたいじゃん?
 伊達男だけに、だって男だから…てか♪」
 泣いてるアイを抱き上げシンはキッチンに向かう。
 「今日はアイの好物のカレーライスにしようか?」
 「う、う…ん。」
 そんな今日の一日。



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