シルバードラゴン。その名の通り体が銀色で包まれているドラゴンだ。そのドラゴンの涙は傷や病気を治し、さらには死者をも生き返らせるという。もしその涙があれば、リリーどころか[売り物屋]自体を買うことができる。しかしみんなそんなことはおとぎ話だと思っていた。
誰かが作ったでたらめだと。
でもハルはそんな皮肉を信じた。一応シルバードラゴンがいるという[魔界の洞窟]があった。
「俺は[魔界の洞窟]へ行く」
ハルは言った。ヒューズをはじめいろんな人がそれを止めた。今まで[魔界の洞窟]から帰ってきた人がいないからだ。
それでもハルの意志は変わらなかった。
[魔界の洞窟]へ向かう前ハルはヒューズに言った。
「最後に頼み事があるんだ」
「なんだい」
「この手紙を伝書鳩に付けて[売り物屋]のリリーに送ってほしいんだ」
ハルはヒューズに手紙を渡した。
「…わかった。元気でな。俺からも質問があるんだ」
「なんだい」
「なぜそこまでして彼女にこだわるんだい」
少し考えてハルは言った。
「…約束したから」
ハルは二週間かけて[魔界の洞窟]についた。恐怖心が無いはずない。
リリーを救うことだけが俺をつきうごかすんだ。
ハルはランプに火をつけて真っ暗な洞窟に足を踏み出した。