『奈央。これ、聖人君に着てもらって。』
母は、何やらタンスの中から洋服を取り出し、あたしに手渡した。
手渡されたモノを見て、あたしは驚いた。
『お母さん、これって男物じゃん?!
どうして家に男物の服なんてあるの?!』
『こういう時の為に、用意しておいたのよ。』
お母さんてば凄いっっ。
そこまで、あたし達のコト、
考えてくれてたなんて――
『お母さん‥‥ありがとう。』
あたしと、
聖人のコト――
認めてくれてるってコトだよね――
『ふふ‥‥。何言ってるの、このコは。
それより、聖人君、制服着たまま寝ちゃってるから、起きたらその服に着替えてもらってね。』
『うん。そうする。』
あたしが母の寝室を出て、
再び、リビングのソファーの上で眠る聖人の所へ戻ると、
『奈‥‥央‥‥‥?!』
ちょうど、
聖人が目を覚ました所だった。
『あは。聖人、おはよう。』
『ん‥‥。もしかして俺、すげぇ爆睡しちゃってた?!』
『うん。凄い気持ち良さそうに寝息立ててたよ。』
『マジで‥‥?!
昨日、京谷と青山の件で振り回されたから、疲れてたのかな‥‥。』
『そだね。あ‥今日は学校休みだし、ゆっくりしてってと母が言ってた。
あと、ルームウェアを用意してくれたから、コレに着替えていいよ。』
聖人は、まだまだ眠そうな目つきで、
リビングの壁に掛けてある時計を見て、時間を確認したかと思うと、
突然、慌てた様子でソファーから立ち上がった。
『マジ?!もう朝じゃん?!俺、帰るわ。』
『そんな、慌てて帰らなくてもいいじゃん。母も、ゆっくりしてってと言ってるし。
もう少し、寝てけば?!眠そうだよ?!』
『いや。やっぱ帰るわ。あ、奈央の母さんに挨拶してかねぇとな‥‥。起きてるかな?!』
『うん。起きてるケド‥‥。
ちょっと待ってて。呼んで来るから。』
あたしが再び母の寝室へ行こうとすると、
『あら〜〜!!
聖人君、いらっしゃ〜〜い!!』
あたしが呼ぶまでもなく、
母の方から、満面の笑みで登場してくれた。