“彩以外とこうなるとは思わなかったな“
煙草に火を着けながら俺は沙也夏との夜を思い出していた。
“彩そっくりだったのは従姉妹だからなのか?“
なんて下世話な事を考えていると、沙也夏が目を覚ました。
「悟さん…」
「悟で良いよ。」
表面上の付き合いとは知る由も無い沙也夏が頬を染める。
初めてでは無いらしいが経験も少ないのだろう事もその一因らしい。
「すごく気持ちよかった。彩ちゃんもこんな事してるんだね。」
「何で!?俺達してないよ!?」
してると言っている反応をしてしまった自分にふと気付き、冷静なフリを装う。二人の秘密にしている事をわざわざ話すとは思えない。
「…?悟の話じゃないよ〜。彩ちゃんと隆くんの話。これから毎日だもんね〜。羨ましいなぁ。」
「毎日って?」
「聞いてないの?彩ちゃんと隆くん結婚するらしいけど??」
そうか…。そういう事だったのか…。
結婚はするが、俺は繋ぎとめておく。
そのための偽装彼女。
もし仮に沙也夏と俺が結婚しようものなら、彩とは一生離れなくなる。
彩の描いたビジョンはそこまで先を見ていたのか…。
「どうしたの?何か怖い顔してるよ?」
沙也夏が不安そうに俺を見ている。
「ごめんね。聞いてないの事で、びっくりしたんだ。何でもないよ。」
そう。何でもないのだ。
表面上の隆との生活。
秘密の俺との生活。
彩は両方を求めたのだ。
「まだ帰らなくて平気?」
「平気だよ♪彩ちゃんと遊んでるって言ってあるから。」
沙也夏は純粋に俺に愛されていると思っているのだろう。
「それなら時間気にしなくても良いね♪」
「なんかやらしい顔してるぅ〜♪」
様々な想いを振り切るように、沙也夏に全てをぶちまけ続けていた…。