「あっ…」
慌てて下駄を取りに行こうとしたら笑い声が聞こえ圭吾が下駄を手にやってきた。
「まさか下駄に出迎えてもらうとは思わなかったよ」
「圭吾さん!」
華はびっくりしたのと恥ずかしいのとで顔を赤らめた。
「太一はいるかな。昨日のドジョウのお礼に酒粕もってきたのだけど」
圭吾はにっこり笑って華に下駄を返しながら尋ねた。
「太一さんなら朝から港までお客を送って行ったわ。妙さんもうちの母と出掛けてるし」
圭吾は少し考えて酒粕を流しに置きに行き華の隣に腰掛けた。
「で、華さんは暇してるんだ?」
圭吾が隣に座ったので華の胸は高鳴った。
「そんな…風にやっぱり見えるでしょ? だって一人で出歩くのは駄目だといわれてるから…」
圭吾は少し考えて立ち上がり帳場に行くと紙に何か書いて戻って来た。
「僕は太一の母さんには信用されてるから行き先さえ書いておけば問題ないよ。暇ならちょっと僕に付き合ってほしいんだ。これから行きたいところがあってさ」
圭吾は立ち上がり華を見た。
「あぁ、それとも華さんが知り合ったばかりの僕と出掛けるのが嫌ならまたにするけど」
「嫌だなんてそんな。じゃあ、支度してくるからちょっと待って…」
華が立ち上がり部屋に行こうとすると圭吾が華の手を握り止める。
「そのままでいいよ。いこう」
圭吾に手を繋がれ半ば強引に店の外に連れ出される。
二人が並んで街を歩くと回りから羨望の視線が飛んでくる。
二人は回りに気も止めずぶらぶらといろんな店を見ながら歩いた。
「さて、そろそろ昼だし御飯でも行きますか。この辺りにお勧めの洋食屋があるんですよ。華さん何か嫌いな物ありますか?」
華は笑って首を横に振った。
「楽しみだわ。圭吾さんのお勧めって」
楽しい時を過ごし二人は夕方に華の屋に戻って来た。
「ただいま」
華の声を聞き、紅と太一が出て来た。
「今日はすいませんでした。置き手紙だけで華さんを連れ回してしまって」
圭吾は紅に頭を下げた。
「こちらこそ。我が儘に育ててしまったので相手するの大変だったでしょう?」
紅の言葉に華は頬を膨らませた。