銀河元号一五五二年第一期四0日(修正太陽暦二月一0日)・ガニバサとガレンバルボは第三次太陽系攻防戦で初めて相まみえた。
流石に学習した銀河連合側は、この時初めて対有人惑星や人工拠点用の《攻星制圧艦》を大量に配備、投入して来た。
地球時代の強襲揚陸艦の、それは拡大発展型だった。
激戦が三ヶ月余に及び、結局又しても太陽系は銀河連合の手には帰らなかったが、ガレンバルボの活躍によって、参加戦力の三割強まで損害を受けた航宙軍事総同盟は、以後しばらく攻勢に出れる余力を失う。
両軍睨み合いの内に、この年は過ぎ、戦争は静かに後半へと進んだ。
だが、ガニバサにはまだ秘策があった。
彼が再び立てた戦略は、壮大かつ危険な香りに満ちていた。
銀河連合一五五三年・航宙軍事総同盟は、全軍の八割に及ぶ六00万隻・四億四千万人もの大機動部隊を動かして、中央域へと雪崩れ込んだ。
一挙にけりを付ける算段か―顔面蒼白になりつつも、銀河連合中央は迎撃策を考えた。
そして、彼等はそれまでの敗北続きに鑑みれば、中々センスの有る所を示し、一軍を裂いて旧ギャームリーグ本国―ガニバサの本拠を叩く作戦を立案した。
何の事は無い―ガニバサの猿真似だ。
これに、中将に昇進していたガレンバルボが反対した。
【前回と全く同じ作戦で敵をやっつける等馬鹿の一つ覚え
大体それはガニバサが自らやってのけた《中古品》ではないか
これではわざわざカードを見せながらトランプする様な物だ
これで勝てる方がどうかしている】
そうだ―明らかにこれは罠だった。
そして、ガレンバルボの反対を受け入れて作戦を修正するだけの器量も柔軟さも、銀河連合は持ち合わせている訳が無かった。
ここからはガニバサの機動戦術の独壇場であった。
まず、大軍を率いて中央域を攻めまくった後、銀河連合が迂回させた別動隊を全軍で包囲してしまう急激な艦隊再配置を行い、しかもすぐさま反転して、あわてて突出していた敵主力をレッサー星系にて大破してしまう。
しかも、ガニバサはそのまま別動隊は無視して、銀河連合深央に進撃し、恐慌状態に陥れた。
ここでようやくガレンバルボが行動の自由を得て、防衛の矢面に立てる様になった。
彼は、今だ肩身の狭かった元軍人のみならず反銀河連合勢力をも懐柔し、特赦を出して味方に付けた。