俺たちには、いっこ上の先輩がいなかった。
にこ上の先輩が引退してもまだ十人(すでに三人やめた)はいたため、廃部にはならなかった。
でも、今現在、部員は四人だけ。
だから今年は新入部員が最低でも三人は欲しい。
「ほら、さっさと着替えて来いよ。」
賢之助が言った。
「わかった。見学だけなのか?」
「いや、道着持ってきてるから練習に参加したいって。」
「んじゃ先にストレッチとか済ましといてくれ。」
「おう。」
俺と悠はすぐに部室に向かった。
今年の新入生はやる気はありそうだな。
「修二。経験者の子、どれくらい強いか、早く確かめたいな。」
悠がプレゼントを待つ子どものように言った。
悠は強いやつと試合をするのが好きだから、まぁ、仕方ないか。
「実力見るために試合形式で乱取りするか?」
「ホントに!?やる!」
「んじゃ早く支度して行かねえとな。」
そう言って、俺たちは道場に向かった。
もぉストレッチを終えていたようだった。
「やって来たか。」
賢之助が言った。
「えっと、一応自己紹介しとこうか。俺は嘉谷修二。この柔道部の主将だ。んでこいつが山下悠だ。」
「よろしく〜。」
「そんでこいつが、まぁ聞いてるだろうけど、岡之原賢之助だ。」
新入生の一人が自己紹介を始めた。
「河野彰太(こうのしょうた)です。柔道は素人ですけど、中学のころはラグビー部だったんで、腕っぷしには自信あります。よろしくお願いします。」
河野がおじぎをした。
タッパあるなぁ。それに足長いし、ホントにいい選手になるかもしれないな。
河野のとなりにいるもう一人の新入生が話し出した。