『はぁ。いえ‥‥こちらこそ。』
アタマに手をやり、ポリポリしてる聖人を見ていると、
あはっっ♪
なんかかわいい。
だって、すごく素直なんだもん。
こんな聖人、クラスメイトの誰も知らないと思うし、
これからも、知られるコトもないと思うケド、
あたしだけが知ってる、聖人の意外な一面。
ちょっとだけ優越感。
これって彼女の特権ってヤツかな?!
『聖人君、そんなに急いで帰らなくちゃいけないの?!
朝ごはん、ウチで食べていきなさい。
私から、お父さんには電話で連絡しておいたから、心配ないわよ。』
母がニコニコしながら、エプロンを身に付けている。
『え゛っっ???
マジっすか?!
ウチの親父に電話したんですか?!』
聖人は、驚いた顔で母にそう言ってから、
あたしの方をチラリと見た。
『お母さん。聖人のお父さんの携帯番号、何で知ってるの?!
あ〜〜っっ!!もしかして!!
聖人のお父さんが毎日、お昼にお弁当を買いに来てくれるって言ってたわよね?!
そのトキに聞き出したんでしょう?!』
ちょっと、からかい半分な口調で、
あたしは、母にそう言った。
『奈央!!もう〜このコは、また!!
親をからかうんじゃないのっっ!!
学校で頂いた、連絡網があるでしょ?!
それを見れば聖人君のお家の電話番号が分かるでしょう?!』
『あはは。そうだね。でもお母さん、何でそんなムキになってるの?!
ねっ聖人?!』
あたしと母のやりとりを見ていた聖人は、
何か思い当たるふしがあったのか、
突然、ぷっと吹き出した。
『ハハハ。親父のヤツ‥‥きっと、奈央のお母さんから電話が来て、すげぇビックリしてると思いますよ。
緊張して、声上擦っていませんでしたか?!』