「新藤壮真(しんどうそうま)です。嘉谷さんと試合がしたくて、この学校に来ました。」
突然のことで、驚いた。
俺は新藤のことは知らない。
けど、こいつは俺の名前を知ってる。
何でだ?
「どうして俺の名前…」
「聞いたんです。俺の先輩に。推薦で高校に行かなかったが、強いやつがいるって。高校になってからは一度も大会で見かけなかったけど、今も本山高校で柔道続けてるはずだって。」
「誰だよ?お前の先輩って。」
俺の知り合いのいた中学でも新藤という名前に思い当たらなかった。
「嘉谷さんも知ってる人ですよ。でも、今度俺が嘉谷に会うまで俺の名前はだすなって言われてるんで、誰かは言えませんけど。」
本人のいないところでなら言ってくれても言ってくれてもよくないか?と思いながらもそれは言わないことにした。
「とにかく。俺は嘉谷さんと試合がしたいんです。」
「やってやれよ修二。」
賢之助が言った。
「そうそう。挑まれた試合は買うもんだよ。」
悠が笑顔で言った。
仕方ないか。
「わかった。そのかわり一通り打ち込み(技をかける練習)が終わったらな。」
「ありがとうございます!」こいつ、柔道好きなんだな。
そんなことを思いながら、打ち込みを始めた。
新藤の打ち込みが目に入った。
スピードがあるうえに、すごくきれいな、相手をかついで投げる、背負い投げをかけていた。
これは気が抜けないな。
久しぶりに緊張している気がした。