ストレッチも打ち込みもした。
そろそれ始めるか。
「それじゃ始めようか。悠、審判やってくれよ。」
「えぇ〜、俺だって試合してぇよ。」
悠が言った。
「仕方ないだろ。ご指名なんだ。賢之助、副審してくれ。」
「おう。」
悠と賢之助が位置についた。
「嘉谷さん、手抜かないでくださいよ。」
「期待してた実力じゃなくても文句は言うなよ。」
実際、俺はそんなには強くない。
俺が漫画の主人公とかなら、あの負けた日から死に物狂いでトレーニングをするかもしれないが、あいにく、俺はそんなことはなかった。
「あぁ、悪いけど河野くん。この試合終わるまで見学しといてくれる?」
「あっ、はい。わかりました。」
素直な子でよかった。
「それじゃ、始めよう。」
悠が言った。
俺と新藤は道場の試合用畳の前で礼をし、定位置についた。
「互いに礼!」
悠の声が響いた。そして「お願いしまーす!」
俺と新藤の声が道場に響いた。
試合が始まった。