ロストクロニクル3―19

五十嵐時  2008-11-26投稿
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「今なんて?」
タクトは思わず聞き返していた。
「その魔導師をこのまま生かす訳にはいかないだろ!」
「そんなの酷すぎるわ!」
パールも反抗する。
「そいつは村をあんな風にしちまったんだぞ」
さっきとは別の水魔導師がやけ野原となってしまった村を見た。
ウェドが反論しようとした時
「おい、何か来るわよ」
ミュークが諭した。
「あれ?ミュークさん・・・」
「タクト、静かに」
ミュークは唇に人差し指を当てた。
「竹林だ・・・」
確かにR11の竹刀が作った竹林が僅かに揺れている。
「まだ何かいるの?」
「ミュークさん!」
そう叫んだ水魔導師の視線の先にはやけ野原、そして、そこから湧いて出てきた無数のムシだった。
ミュークの予想は外れた。いや、そうではなかった。
タクトたちは今、竹林とやけ野原の間に挟まれていた。
「タクト!竹林を見ろ」
タクトが振り返るとそこには、竹林から太く長い体を覗かせる黒い蛇がいた。
「どうする?後ろは考えられない程の数のムシ、目の前には化け物」
右には弓を手に構えたパール、左にはウェドの挑戦的な顔があった。
どうすればいいんだろう。こんな時、父さんならどうしたんだろう・・・
「シャープが!」
シャープは蛇のすぐ近くにいた。チロチロと舌を出し入れしてシャープを威嚇していた。驚いて動けないようだ。
「・・・僕に任せて下さい。タクトさんたちは・・・ムシを」
フラットがゆっくり立ち上がった。
「このガキ!」
「待ちなさい」
ミュークが『このガキ!』と言った魔導師を手で遮った。
「よし!シャープを助けに行きなさい」
ミュークが優しく頭を撫でた。
「ありがとうございます」
フラットはヨロヨロと竹林に向かって行った。
「ミュークさん!」
「大丈夫だ。あんなボロボロの体で何ができるの?」
ミュークは初めからフラットに期待していなかったのだ。
「どうでもいいけど、皆さん。後方をご覧下さい」
ウェドがいやに丁寧な言葉で案内した先には、もうすぐ近くにムシの大群がいた。
「蛇はフラットに任せて、ムシはわたしたちがなんとかしましょう」
パールは早くも十匹は仕留めていた。
なんでこんなにたくさんの敵がリコードに集まったんだ?でも、今するべきことはただひとつだ。
月は西の空に沈みかけていた。

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