黒峯は優しかった
私を真っ直ぐ見てくれた唯一の人
今でも好き
「まったお前は!何で間違えるんだよ!」
「……」
学校から帰ると、課題を見てくれると言って強制的に勉強タイム。
「あのね…聖夜…もう少し丁寧な言葉遣い出来ないんですか?」
「お嬢様、この問いは先程説明した例文と同じパターンです。問題に踊らされて間違えず、良く考えてもう一度見直して頂けますか?」
聖夜が、さっきまでの乱暴なもの言いから、爽やか丁寧語の言葉遣いに変えて言うと、朱斐は寒気で身を震わせた。
違和感がありすぎ。
「わ…分かりました(泣)今までのように普通に話して下さい」
「分かればいいんだ!だろ?今更俺に表面作れって言っても寒いだけだ!まぁお前は賢いからな!物分かりがいい」
聖夜がニッコリ笑い、朱斐の頭を乱暴になでる。
「ハァ…あなたって変わってるわね」
「何で?」
「弱味を握ったなら私を脅して地位やお金を求めない?あなたがあなたらしく振る舞うのを黙認しろだなんて…欲が無い人ね」
「そうか?あっなら…」
「?」
聖夜が、いきなり朱斐の手を掴むと英国紳士のように手の甲にキスをした。
聖夜が顔を上げ、硬直している朱斐に、美麗な顔を向けると綺麗に微笑んだ。
「お嬢様、わたくしと是非結婚をして下さい」
「あっ…えっ///」
朱斐は顔を真っ赤に染め、動揺し、パニックを起こしている。
それを見て聖夜が吹き出す。
「ハハッ…嘘に決ってんだろ?本気にしたか?まぁ脅して手にするなら社長の地位で、お前と結婚するのが手っ取り早いよな〜」
「ッ///」
朱斐が口付けられた手を押さえ、真っ赤な顔を下に向ける。
「?何だ…兄貴にそれくらいされてるだろ。パーティーで挨拶でされたり…」
「ッ///…無い。だ・だって黒峯は私に指一本触れなかったもの。挨拶で…された事も無い」
「なら良かったじゃないか、たかが手にキスしたくらいで真っ赤になってたらこの先大変だぞ。いきなり抱きついてくる富豪もいるからな」
「Σ!そんな…」
「コミニケーションだろ。踊る時も体密着させるし……お前ほんと純粋すぎんな」
「……」
聖夜の言葉は棘みたいで心が傷つく…
誰も私にそんな口を聞かないのに
不思議な人…