「ダリウスが!?」
アリネスはその名前を聞いて、驚いたように声を上げた。
「はい。黒幕はカイストランド第二王子ダリウスのようです」
「まさか…あの事に対しての報復…!?」
「それはわかりません」
リグラは首を横に振って、一つ小さく息を吐いた。
「ただ、ああいった性格の男は、誰かに対する憎しみを引きずりやすいのです。…残念な事に…」
「何て事…」
アリネスは唇を噛んで、拳を震わせた。
「アリネス様や我々はその後、非礼を詫びました。カイストランドに赴いて直接謝罪もしています。だから責任を感じる事はありません」
「しかし…結果的に私のせいで国民の命が…」
「…アリネス様、そのお考えは素晴らしいと思います。ですが、こういう考えも出来ます。『そんなに私が憎いなら、何故私を殺さなかったのだ』、と」
「あ…」
「彼は貴方を殺さず、我が国民を大量に殺し、その混乱に乗じて王位を狙おうとしたのです。…結局、彼は自分の欲望の為に行動を起こしたに過ぎないのです」「…」
それを聞いたアリネスは、しばらく眉間にしわを寄せて唸っていたが、やがて顔を上げて、
「確かに、彼の行動は身勝手極まりないわ。でも、私の責任が全く無いとは言えない」