瑶子が部屋の整理を始めてから既に三時間が経ち、時刻はもう日が変わり午前一時近くまで回っていた。両親は既に自室で就寝している。いつもながら、彼等の睡眠能力には目を見張るものがある。両親ともに職業柄、休みは取れる時に最大限取ると言う事が身体に染み付いているのであろう。
最近のあまりの忙しさに睡眠を削っていた瑶子には心底羨ましく感じる特技である。
「隣りの部屋でこんなにうるさくしているのに…。なんで、この人たちは熟睡出来るんだろう…。」
ようやく自室の整理がおわり、次はリビングの荷物を整理しなくては、と瑶子は思ったのだが。
この時初めて部屋の整理を開始してから時計をみて、いまの時刻を知り。これ以上は近所迷惑にもなり騒がしく出来ない為、リビングの荷物を自室に移すことにして本日の作業を終了した。
翌朝、瑶子の目が覚めたのは午前八時。結子との待ち合わせの時間には間に合う時間には起きれたので彼女はかなりホッとした。
寝間着姿で、苦労のかいもあり広くなったリビングに行くと晃と美和が、そして、何故か今日一緒にでかけるはずの佐伯結子がコーヒーを飲んでいる。
「瑶子ちゃん、おはよ。」と、結子は普通に声をかけてきた。
「あ、おはよ…。」
何故、ここに結子がいるの、と彼女は頭の中で状況を整理する。
結子、晃、美和の順にそれぞれの顔をみる。結子と美和がニコニコしているのをみて、晃が仕方ないなと苦笑いをしている。なるほど…。
「母さん、昨日のうちに結子にメールでも送ってたんでしょ。」
ムッとした顔で美和を瑶子が睨む。
美和は瑶子の態度に対し、何時もの事と慣れた感じで、
「瑶子の寝起きの悪さは結子ちゃんも知ってるからね。昨日、夜遅くまで部屋の片付けすると思うから、ってメールしただけよ。」
と、しれっと答える。
結子は結子で、
「そんなメールもらったら、瑶子のこと起こしに来てあげなきゃいけないじゃない。」
とコーヒーを飲みながら笑って言う。
「丁度、起こしにいこうとしてたんだよ、朝御飯だよってね。」
けらけらと笑う二人と呆然としている一人。
それをため息まじりに眺めている一人。その一人が呆然と声を失ってる愛娘にコーヒーと牛乳を掻き混ぜながら声を掛ける。
「母さんや結子ちゃんもそこまでにしなさい。
瑶子も早く着替えてきて、朝御飯を食べなさい。」