黒峯と聖夜は兄弟なのに全然似てない…
でも
聖夜は不思議な人
だから
気になる
「聖夜…普通私の後ろか前に立って接するのが普通だと思うの」
「あ?何で俺がそんな態度とらないといけないんだ?」
仕えている主と同じテーブルに座り、焼き菓子やお茶を一緒に食している。
しかもテーブルに肘を付け、行儀悪く、音を平気でたてている。
「──……あなた…二重人格みたい」
朱斐が呆れながら言うと、聖夜はフッと笑う。
「それ…よく言われる。…まぁそいつは俺の外面を見て〈俺〉じゃないと言ったな」
「?でも…聖夜礼儀正しい時、綺麗よね」
「だろ?全神経使って愛想笑いや立ち振る舞いに気をつけてるからな〜金持ちは態度を気にするからカッタルイ」
「──……初めて会った時も言ってた。カッタルイ仕事って…何で私の付き人になったの?断れなかったから?」
「違う。兄貴に頼まれたんだ」
「黒峯に…?何で…」
「そんなのお前の事愛してるからだろ」
「えっ?」
「あの兄貴が俺に頭を下げて、お前の事頼むみたいな事言ったからな…よっぽどお前が大切なんだろ」
朱斐は聖夜の言葉に混乱する。
「だって…黒峯…私のこと…好きになれないって…」
「クソ真面目な兄貴が社長令嬢に手出すわけないだろ。お前…気付かなかったのか?」
「──……」
「結局、お前達がいくら両思いでも叶わない恋だな…」
「黒峯……今どうしてる?」
「………婚約者がいる」
「Σ!」
「お前の親父命令。この前見合いして今は婚約中。朱斐…あきらめろ…いくら兄貴を思ってもお前達は結ばれない」
ポタッ
「朱斐…」
朱斐は声も出さずに、目から涙を溢した。
無表情に近い顔から涙は流れ、頬をつたり手に落ちた。
「──……忘れろ。忘れて…次の相手を見付けろ」
聖夜は朱斐の涙をソッとぬぐうと、朱斐の頭をグイッと自分の胸に押し付けた。
朱斐は聖夜の懐で、悲しみ嘆きただ涙を流す。
黒峯は私の傍にいてくれた…
辛い時も苦しい時も
楽しい時も嬉しい時も…
黒峯が離れて行ってしまう…
手の届かない所に行ってしまう…
「黒…峯……置いて…行かないで…」
「……」
私はとても大好きな人を追い掛ける勇気はありませんでした…