それ以外に理由なんて無い。
「目の前で傷付き倒れている人が居た、だから助けた。だから、何も考える必要なんてない。精々、ラッキーだった程度に考えればいいよ」
「…」
「な?」
「…貴方は馬鹿ですね」
ゴーン…。
馬鹿って言われた…。
凄い呆れられた目で馬鹿って言われた…。
いや、そりゃ否定は出来ないけどさぁ…。
「少しは考えなかったのですか…?」
「へ?」
カチという軽い音が響いた刹那、気付くと彼女は再び俺の喉元にナイフを突き付けていた。
「動けるようになった私がまた貴方を襲うという事を…」
「…そりゃ、考えたよ。じゃなきゃナイフを奪うような真似初めからしない」
「なら何故返したんですか?」
「さっきも説明しただろ。戦う意思が無いことの証明だよ。――それと」
「…」
「大切なものっぽかったからさ」
「…」
「…」
「…ぷっ」
「!」
「くく、ははは…やっぱり貴方はよく分からない人ですね…」
彼女はそう言ってナイフをおろした。
「…」
「?どうしました…?」
「…いや…」
まさか笑うという感情があったとは思わなかった…。
「…何か失礼なこと考えていませんか?」
「そんな滅相もない」
続