「じゃあ、幼い頃に鬼頭の両親は警察に連れていかれたってことか?」
田中は、人のことを追求するのが好きみたいだ。
「まあ、簡単に言えば。」
僕は曖昧に答える。
「何で連れてかれたんだ?理由があるはずだろ?」
田中は、いつだってしつこい。
「理由なんかいいから、父さんたちを返してほしい。」
今も、帰って来ると信じている。
「今、鬼頭の一番嫌いなものは?」
「警察に決まってる。」
「だろうね。」
「いつか殺してやる。」
「誰を?」
「警察に決まってる。」
明日にでも殺したいと思っているくらいだ。誰でもいいから、警察官を。
「俺も手伝うよ。」
田中が冗談まじりに言う。
「その時はよろしく頼むよ。」
本当に手伝ってもらおうか、と考えてみる。
「お前、ろくな大人にならないな。」
「なんたって僕の夢は、警察殺しだから。」
「高校生にしては、立派な夢だねぇ。」
「僕は本気だ。」
窓からオレンジ色が染み込んでくる。
僕は、本格的に殺人計画を立てることにする。
それにしても、父さんと母さん、いつ帰って来るんだろう。
―続く―