「…いいえ、何もしていないわ…」
エミリアは首を小さく横に振った。
「ただ、ちょっと…ね」
「…はあ…」
ルイスはしきりに首を傾げながら、怪訝そうな顔をした。
ロイ…さん。
「!」
ロイはその声を聞いた瞬間、驚いたように顔を上げた。
「え、エリクシオン?」
そうです。
「エリクシオン?あんた、何言ってんの?」
ミリスは不思議そうな表情で、ロイに尋ねた。
「あ…いや、その…」
緊急事態です。
「緊急事態…って、何がですか?」
「ちょっと…あんた、誰としゃべってんのよ!?」
ミリスは心配そうな表情で、ロイの顔を覗き込んだ。「い、いや…だから…」
まるで妻に不倫現場を見られた夫みたいですね。ああ仲良き事は美しきかな。
「何、この状況を楽しんでるんですか!こっちはいきなり話かけられて、混乱してるんですよ!」
「…ろ、ロイ、ごめんなさい…。いきなり話掛けてしまって…」
ミリスはしゅんとした表情で、ロイから離れた。
「はっ!ち、違うんだよ、ミリス姉ちゃん。今、ちょっとジャビネス様の魔法剣『エリクシオン』と話してただけだから、姉ちゃんを怒った訳じゃ…」
「…ロイ、お前、本当に大丈夫か?」