シルバードラゴンはその涙をビンに一滴入れハルに渡した。一滴でもビンはいっぱいになった。
「さあこれで彼女を助けなさい。約束なのでしょう?」
ハルは嬉しさのあまり泣いていた。
「ありがとう。ありがとう」
ハルは震えながらビンを受け取った。
「…さて、では私の背中に乗りなさい」
シルバードラゴンはしゃがみ込みハルを背中に乗せた。
「どうするんだい?」
と、ハル。シルバードラゴンは優しく言った。
「リリーのところへ行くのさ」
「できたあ!」
リリーは声をあげた。ハルの絵がとうとう完成したのだ。今までで最高の出来映えだ。
ハルはまだ来ない。
でも全く悲しくなかった。ハルは必ず来る。なぜか確信があった。
ドンドン!
ドアを叩く音がリリーの部屋に響いた。
ハル?
リリーはそう思った。ハルが私を助けに来たんだ。やっぱり来てくれたんだ。リリーは勢いよくドアを開けた。
「何を騒いでいるんだ。こんな夜中に」
そこにはダズがいた。イライラした顔をしている。ハルではなかった。がっかりするリリー。
「すいません。ちょっと…」
ダズは部屋の奥に目をやった。そこには今まで見たことのない絵があった。ダズはすごい顔をして驚いた。
「なんだあの絵は!」
しまった!ハルの絵がダズに見つかってしまった。慌てるリリー。
「どけ!」
ダズはリリーを押し出しその絵の前に立った。
「…なんてきれいな絵だ」
ダズはしばらく絵に見とれていた。そしてはっと我に返り、リリーを怒鳴った。
「なんでこの絵を俺に黙って描いていた。もっと早く俺に渡せ!」
「い、いやこれは…」
リリーは返事に困った。
「うるさい!」
ダズがリリーを叩こうとした時、突然大きな風が吹いて家を揺らした。ぐらつく二人。
「何だ?」
ダズはベランダに出た。そしてダズは目を疑った。
「シルバードラゴン?」