このムシの大群と戦い始めてどれくらいの時間が経ったのだろう。タクトやミュークたちは体力の限界が近づいてきた。
「このままじゃきりがないぞ!」
「一時撤退だ!」
「駄目だ。まだフラットが」
そう声を上げたのはタクトだった。
フラットは蛇のいる竹やぶに入って行った。 「諦めろ。どうせすぐ負ける」
水の魔導師たちはたちはタクトの言うことを聞かずに逃げて行ってしまった。残ったのはタクト、パール、ウェドそしてミュークだけになってしまった。
「なによ!フラットとシャープよりも自分たちの命の方が大切なの!」
パールは弓を短剣に持ち変えていた。
「仕方ない。ここは私たちだけで持ちこたえるぞ」
だが、タクトたちの体力は限界に近かった。
フラットはボロボロの体を引きずりながら竹やぶに着いた。
「おーい」
蛇の意識をシャープから
自分に向けさせた。
蛇はゆっくりこちらへ向かってくる。
「もっと中心へ来い。すぐに終わらせる」
蛇が中心に来た。
「シャープ!逃げろ!」
フラットは竹に火を放った。
「竹やぶから火が出てるぞ!」
「なるほど、蛇を倒すんでなく、竹やぶに火を放って撃退する気か」
蛇は火を避けるように村から消えていった。
ムシの大群も村の魔導師全員の力で撃退することに成功した。
タクトたち四人は仰向けに横たわっていた。
「悪夢の様な一夜だったな」
「でも全部終わった」
疲れきった声だった。
「フラットはどこ?」
パールが思い出した様に辺りを見回した。
フラットは焼けた竹やぶの中で一人、うつむきながら座っていた。まるで全てを失った人の様に見える。
「フラット?」
パールが近づいていく。
「僕は、とんでもないことを」
「そんなことない」
パールがフラットの言葉の後に間髪入れずに断言した。
「でも」
「でも、あなたは反省してるんでしょ?自分は間違ったことをしたって」
「村も無くなりました」
「直せばいいでしょ」
優しい言葉でひとつずつ否定していく。
「あなたは自分が一人だと思ってない?」
黙っている。
「心配してくれる誰かがこの世界のどこかに必ずいるわ」
タクトが少し離れて立っていた。
「フラット、ぼくたちと旅をしないか?この広い世界を見に」
タクトの後ろから太陽が上ってきた。