最低な気持ち?

龍王  2006-06-20投稿
閲覧数[734] 良い投票[0] 悪い投票[0]

菫は、路上の日陰になっている石段に座り込んでいた。
無表情でお腹に手を当てている。

(──……鞠花ちゃんがあの時…蓮華をとったなら…私は…身を引こうと思った。…私は蓮華の幸せを…願い始めていたから…)

ハァと溜め息が無意識に出る。

「菫!」
「……蓮華」

蓮華が走り駆け寄って来た。息を切らし、菫の前まで来る。

「…菫…具合い…悪いのか?」

息を切らしながら蓮華が聞くと、菫は顰笑した。

「いいえ…少し疲れて座っていただけ…蓮華はどうしたの?」
「あっ…あの…ごめん!俺どうかしてた。頭を冷やしてよく考えた。…俺…鞠花の事は忘れる。…だから俺と結婚して下さい」

蓮華が地面に片膝を付け、菫の手を握った。
蓮華の真剣な顔付きに、蓮華の揺るぎ無い決意を感じる菫だが、微妙な気持ちだった。

「──……でも…いいの?…あなたが押し続けたら鞠花ちゃん…傾くと思う」

いくら椿君が好きだと言っても、蓮華の事もずっと愛していたのだから…
簡単に気持ちは無くならない…

「いいんだ。俺は…お前と俺達の子供を一番に思って守るよ」
「……本当に?私達を守ってくれるの?」
「ああ」
「…」

菫が、蓮華の手を握り返し優しく微笑む。

「これからは…俺達で頑張って行こう」
「うん」

二人はかたく手を繋ぎ、幸せになろうと誓い合う。ここまで来るまで色々あったが二人はそれを乗り越え、結婚という道を決めた。

「これからは三人で一緒にいよう」

蓮華が、菫を愛しそうに抱き締めた。
菫が蓮華の温もりを感じ、顔がグシャと崩れ涙目になる。
しばらく二人は抱き合い時間が静かに流れた。

「──……」

ブ──

二人のすぐ横の道路から車が向かって走ってくる。スピードはあまり出ていない。

キキキ─キ──

安全運転だった車がいきなりハンドルをきり、急ブレーキをかけながら二人に突進してくる。

「Σ蓮華!!」

ドガガッガン───

菫が車に気付き、声をあげた瞬間には遅く、車は二人にぶつかり止まった。

ブレーキの音と共に大きな衝突音が響き、辺りは騒然となった。



二人は固く抱き合ったまま意識無く…

体から流れた赤い血が地面に広がり、凄惨な光景が目の前に押し寄せた…




投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 龍王 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ