猛は部屋を出ていった。
その現実は体に穴が空いたように感じる。
今は何も考えられない。
携帯の着信を見ると
「優先輩…」
今はかけなおしちゃいけないとわかっているのに指は発信ボタンを押していた。
何をしゃべったかは覚えてないけど先輩はすぐ家にきてくれた。
「玲…大丈夫か?」
「わかりません」
先輩は黙って抱き締めてくれた。
私は先輩の胸でやっと声を出して泣くことが出来た。
朝が来て気付いた事が一つある。
辛いけど猛と別れたことに少しほっとしている自分がいたこと。
私はずっと泣きたかったんだと言うこと。
「じゃぁ、俺一回家戻るわ」「すいませんでした」
「じゃぁな」
そういって笑顔で先輩は帰った。
あの笑顔に今度は甘えてしまったと反省。
しばらくするとチャイムがなる。先輩かな?
「はぃ」
そこに立っていたのは猛だった。
「玲が本当に帰ってきて欲しかったのは俺じゃないでしょ?」
笑っていたけど目は怒っていた。
「何言ってるの?」
「あいつは…誰?」
「とりあえず…中に入って」
猛は渋々部屋に上がった。
きっとさっき部屋から出ていく先輩を見たんだ。
すごく怒っている猛になんだか私も腹が立ってきた。