悟と亜子は、付き合って三ヶ月になる。以前から仲が良く、一緒に帰宅していたことがきっかけだ。
中学生活最後の夏が終わり、部活を引退した二人は、互いの家で受験勉強をするようになった。ほとんどが悟の家だったが、それは、その方が悟が落ち着くからだった。亜子に至っては、どちらの家だろうと関係ない。基本的にどこにいてもくつろげる彼女は、さっきから新しいゲームに没頭していた。
「それ、持って帰れば」
いつまで経ってもやめようとしないので、悟は言った。
「いいの?」
亜子はコントローラーを持つ手を休めてこちらを見た。
「いいよ、別に」
正直、ゲームなんてどうでもよかった。
悟は左手で電源を切ると、「ああっ」と、声を上げた亜子を、押さえるようにしてキスをした。
「こんなの、一人でもできるだろ?」
囁くように言うと、亜子は小さな声で「うん」と、頷いた。
「もっかい、していい?」
悟が言うと、亜子はまた頷いた。
悟は再び口づけ、今度は舌を差し入れたが、亜子は抵抗しなかった。
だが、これ以上はだめだ。
悟は唇を離すと、余韻を残すことなく立ち上がり、「送ってく」と、言った。