悟と亜子は、暗がりの中を手を繋いで歩いていた。この辺りは街灯がないため、日が沈むと真っ暗になる。二人の家は離れているのだが、そうでなくても、亜子は一人で夜道を歩けなかった。だから悟は、毎日こうして家まで送り届けている。
並んで歩くのは、付き合う前からの習慣なので、亜子はすっかりリラックスしていた。今日学校であったことや、昨日観たテレビのことを楽しそうに話している。悟は相槌を打っていたが、実際はあまり聞いていなかった。先程キスをしたせいで、体が熱を帯びていた。
悟は手を離すと、今度は指を絡めるようにして、繋ぎ直した。握った弾みで引き寄せられた亜子は、緊張のあまりに口をつぐんだ。