庭には月の光に照らされているシルバードラゴンがいた。突然の事態に混乱するダズ。
シルバードラゴンだって!?
リリーもベランダに飛び出した。確かにいた。本当にシルバードラゴンなんていたんだ。銀色に輝く鱗が美しい。そのシルバードラゴンの背中から降りてくる青年をリリーは見た。すぐに正体はわかった。
「ハルゥ!!」
リリーは叫んだ。青年はハルだった。やっぱり来てくれた。ハルはにっこり笑ってリリーを見ている。手にはビンが持たれていた。
「リリーを買い取ったダズ」
シルバードラゴンは呼んだ。
「な、何だ」
ダズは恐る恐る答えた。
「この青年は今、私の涙を持っています」
「なんだって!?シルバードラゴンの涙か?」
「はい。この涙があればあなたは一生お金に困らないでしょう。そこでリリーをこの青年に売ってください」
「売る!」
ダズは即答した。
「ハア…」
シルバードラゴンはため息をついた。少しはリリーを売ることにためらわないのか。やはり人を買うような人にろくな奴はいない。ハルを除いて。
ダズとリリーが庭に降りて来た。リリーは荷物を持っていた。
「よし。シルバードラゴンの涙を渡せ」
ダズは興奮しながら言った。
「ああ」
ハルはシルバードラゴンの涙が入ったビンをダズに渡した。その瞬間リリーはハルに抱き着いた。
「ハル!」
「リリー!」
抱き合う二人。
「ありがとう。ありがとう。ありがとう…」
と、繰り返すリリー。
「言っただろう。リリーを助けるって」
ハルは優しく言った。
「…そうだ!ハルのために絵を描いたんだよ」
リリーは荷物の中から絵をだそうとした。
「本当かい。それは嬉しいね」
「だって約束だもん」
笑う二人。
「ちょっと待ってくれ!」
そこでダズは大声を上げた。