Kidnapping

おぼろづき  2008-12-05投稿
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嶋村家をでて最寄駅へ向かって瑶子と結子が歩いていく。瑶子は相変わらずほっぺたを膨らませている。そして、その横を結子が歩いている。
「なあに、まだ怒ってるの?」
結子が瑶子の顔を笑いながら覗き込む。
「怒ってるよ!なんで、あんなに、内緒にしている事、いうかなあっ。」
結子は心の中で「とっくにバレてるんだけどな。」と思いながらも、ごめん、と瑶子に向かって手を合わせる。
「ケーキ、おごるから機嫌直してよ。」
そして、こう続けた。
「そこで、はじめの欲しがっているもの教えてあげるから。」


結城始。先程から瑶子が両親に一生懸命にその存在を隠している彼女の彼氏だ。彼は佐伯結子の従姉弟であり彼女達の幼馴染でもある。
彼の家は地元では結構名の知れた料亭旅館である。
…いや、「だった。」が、正しい表現になるのか。
十数年前になるが、宿泊客の煙草の不始末により彼の母屋を含め旅館が全館焼失してしまったのだ。その時に従業員、宿泊客の救助にあたった父親は焼死、母親は始を助ける時に煙に巻かれ一酸化中毒により意識不明になってしまったのだ。彼女はいまも都内の病院で意識不明のまま、入院している。そのため、始は親戚である佐伯家の世話を受けているのだ。


「そういえば、今日遊びにいく事は始には話してないの?」
結子は聞いた。
「今日はなんか、用事があるみたい。新しい携帯見に行くから後から来るっていってたよ。だから、いない間にクリスマスプレゼントを見に行こうかなって思ったの。」
「なるほど。あたしはいろいろな意味で便利屋とされた訳だ。」
と、今度は結子がすねてみせた。「ケーキ付けるのは、やっぱりやめたっ。」
そして、
「でも、これで50:50だよね。」
と笑った。
「…しかたないなあ…。」と瑶子は笑顔を返す。
会話を交わすうちに彼女達は駅に着き改札口の中に消えていった。



「…どれが良いのかなあ…。」
先程から話題に上がっていた結城始が携帯電話を選んでいる。これから必要になる仕事用の携帯電話を探しているのだ。
誰が使っても、ネット接続が簡単に出来て使いやすい端末。彼が探しているのはその様な端末なのだ。店員にそれぞれの端末の特色、使い勝手の良さ、また、その端末の欠点まで深く質問をし、そのなかで、一番良いと思ったものを、始は買い求めた。

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