ドアノブのガチャガチャとする音が響いて来た。
ドアが開いて警備員ランスが入って来る。
落とし物を取りに倉庫に戻って来た時だ。
中から声が聞こえて来るのを不審に思って、ランスはドアを開けたが…
中は真っ暗で誰もいない。
懐中電灯を照らしながら辺りを見回す。
「おかしいなァ、確かに女の声がしたハズなんだが……気のせいか」
そう納得してランスはドアを閉めた。
シーンと静まり返る部屋の中…
ローズマリーは、ガラスケースの中に何事もなかったように収まっていた。
――――――――
パーソロン邸に1人の女性が訪れた。
応対に出たアースルは女性の顔を見て驚き、自分の目を疑う。
「お久しぶりです旦那様」
その女性は礼儀正しく、丁寧に挨拶した。
ジッと女性を見つめるアースル。
心の奥から感情がひしひしと湧いて来た。
「君は確か…」
「元メイドのキャリー・コルベットです。
覚えてますか?」
「ああ…覚えておるよ」
忘れてはいない。
火災で焼失する前のバーソロン邸で働いていたメイドたちの中で…
キャリアが短く、年齢も若かった。
「クビになった人間が、今頃になってノコノコ顔を出すなんて…
我ながら、お恥ずかしい限りです」
「何を言う? もう、何も気にする事はない。
むしろ私としては、君から顔を見せてくれた事に感謝するよ」
「お冗談を」
「私は本気で言ってるんだよ。よく来てくれたって思ってる」
「旦那様」
思わずジーンと来たキャリー。
いつも笑顔を絶やさず、仕事覚えの早い真面目なコだったキャリー…
ジーナの身の回りの世話と話し相手の担当を任されるぐらい…信頼が高かった。