ところが、屋敷内で現金盗難事件が発生…
キャリーが疑われる事態となった。
勿論、キャリーにだってアリバイがある。
だけど、無実である事の証拠が揃っていない。
容赦なく解雇処分を受けたキャリーは、無念の思いで屋敷を出て行った。
今から12年前、キャリーが18歳の時である。
それが今…
「私を許して欲しい」
アースルが謝罪した。
「え?」
思いもよらないアースルの態度に、キャリーは戸惑う。
アースルに依ると…
解雇処分を受けたキャリーが屋敷を出て行った後、別のメイドの1人が本当の事を白状したのだと言う。
何と、現金をワザと隠して事件をでっち上げていたのだった。
優秀なキャリーを妬んでの計画的な騙し行為だったようだ。
「それで私は、すぐに君を呼び戻して処分を取り消そうとした。
だが、その時君は既に…どこか遠くへ行ってしまった。色々と手を尽くして君を探したよ」
「あの後、私は街を出たんです」
「あれから今日まで、私は君の事が気になって仕方がなかった」
「それほどまでに私を、気にかけてくれたのですね。嬉しいですわ」
と、笑顔のキャリー。
「今は、どうしているのかね?」
「結婚して、2人の子供たちに囲まれて暮らしております」
「それは良かった。
安心したよ」
「奥様は? サラー奥様はどうなされました?」
「妻は…、5年前の屋敷の火災で亡くなったよ」
しんみりと答えるアースルの顔を見て、キャリーは思わずハッとなる。
質問しなければ良かった。
「申し訳ありません、何も知らずに…」
「いやいや、気にする事ないよ」
そこへ使用人のマーガレットがやって来た。
「旦那様、ルーク・ハリーと言う学生さんが見えられました」
「すぐにココへ通してやってくれ」
「かしこまりました」
立ち去るマーガレット。
キャリーは話しを変えた。