最低な気持ち[22]完

龍王  2006-06-21投稿
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鞠花は
蓮華と椿の死に耐えきれず
正気を無くし、魂の無い人形となった

精神を病んだ鞠花は何に対しても反応せず、食事も自分でしようとしない為、人の手で生きているだけだった…


精神病院。
緑に囲まれた場所にある療養もかねた専門の精神病院。

「先生…鞠花ちゃんの様子は…?」
「まだ…何の反応も見せないの。目を放したら…無意識に命を絶とうとするし…」
「…そう…ですか…」
「あなたも…大変だったわね。菫さん…」
「いいえ…私はまだこの子がいましたから…」
「可愛いわね、お子さん」
「ありがとうございます。…私ちょっと…鞠花ちゃんの様子見てきますね」

菫はそう言い一礼すると、中庭にいると聞いた鞠花に会いに向かった。


「鞠花ちゃん…」

中庭にあるベンチに座っていた、どこを見ているのか分からない正気の無い鞠花に声をかける。
菫が声をかけるが、反応は無く、鞠花は生きているのに、心は死んでいた。

「鞠花ちゃん…あのね今日はこの子を見てもらおうと思って来たの。…蓮華の子よ」

菫は、腕に抱いていた赤子を鞠花に見えるように見せる。

「名前はね…〈蓮〉にしようと思うの…」

その言葉に鞠花がピクッと反応した。

「──……鞠花ちゃんさえ良ければ…この子の母親になって欲しいの。…蓮華の忘れ形見…だから…蓮華の為にも…」

鞠花の目から一粒の涙が落ちた。

「鞠花ちゃん…」
「ッ…」

まだ言葉を喋る事は出来なかったが、鞠花は赤子を受けとり、シッカリと抱き締めた。

「──……蓮華も椿君も…あなたを本当に愛してたわ。だから…あなたはみんなの為に…蓮と一緒に生きてね。鞠花ちゃん…」


それから
鞠花は徐々に心と精神が回復し、少しずつ二人の死を乗り越えようとしていた。

蓮華と菫の子供〈蓮〉は
菫の強い希望も有り、鞠花の養子になった。

鞠花は蓮のおかげで
悲しみを乗り越え

蓮の良き母になるようにと日々楽しそうに頑張り、それなりに幸せだったらしい…


「──……椿…蓮華…私は…生きようと思う。この子と一緒に…」

鞠花の腕の中で蓮は安らかに眠っていた。
鞠花はそれを見て無意識に笑みをこぼす。


生まれ変わったら
また
会いましょう

椿
蓮華

ありがとう…

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