1 運命
運命って何?運命は神様が決めるの?
君に出逢えたことは運命なのかな?
君との出逢いは桜が風に舞う季節だった。
いつものように6時に起きてリビングに行く。
「おはよっ」
制服のリボンを直しながら言った。
「あら、おはよう」
優しく微笑むお母さん。あたしは知ってる。この笑顔の裏には秘密があることを。
お母さんは浮気をしているのだ。
「今日は、友達と遊びに行くから、遅くなる。」
あたしはテーブルの上に置いてある、目玉焼きを頬張りながら言う。
「母さんも、今日は知り合いと食事に行くから遅くなるからちょうどいいわね。」
またもや微笑むお母さん。父のスーツにアイロンをかけるお母さんの左手の薬指には、指輪はなかった。
浮気相手には夫が居るとは言ってないのだろうか。そんなことを考えていると、食欲が無くなってきた。
あたしはフォークをカチャンと皿の上にわざとらしく音をたてて立ち上がった。
「ごちそうさま…」
「あら、もういいの?」
「うん…時間ないし。」
「そう…?」
あたしは小さくうなずくとリビングを出ていった。
朝は毎日、お母さんの浮気を考えて、嫌な気分になる。
「はぁ…」
自分の部屋に入るとあたしは大きくため息をついた。
現実がイヤだった。お母さんは浮気。そんなことには全く気が付かないお父さん。
世界一あたしは不幸なんじゃないか。そう思ってしまった。
つい1週間前には失恋。高校2年生になって一ヶ月。
まさに波瀾万丈。
あたしは部屋の床に倒れ込んだ。
現在のあたしと過去のあたしではきっと過去のあたしのほうが幸せだっただろう。
あたしはふっと目に入った中学の卒業アルバムを床に寝っころがったまま手に取った。
アルバムを開く。ペラペラ捲っていると、高橋 瑠実、まさにあたしの名前があった。
笑顔だ。現在のあたしとは大違いだった。
「んっ?」
あたしの写真の右隣に見たことのない男の子が写っていた。同じクラスなのに覚えていない。
「高橋 実留…?」
同じ苗字…。
覚えのない元・クラスメイト。同じ苗字。
ただそれだけであたしは運命を感じていた。