「ヘトラレスタの谷の細かい場所が分かったぜ。」
早くも3つ目の林檎を頬張りながらラウフが言う。
「これがまた、随分辺鄙な場所にあってな。行くまでに10日はかかる。」
「10日!?」
「直線距離なら半日だ。
ただ山んなかで、4つくらい越えなきゃならん。」
驚いた。どうやらレミスという男は随分変わった人物らしい。
「10日…山4つ…」
魂の抜けたようなランスォールの目が右へ左へと泳ぐ。
「準備は万端にしなきゃならない。ってことでどうだ?今日はホリデーで。」
「なんでホリデーなんだ。普通に休みって言えよ。」ランスォールがラウフに抗議するとシーラがクスリと笑った。
「…なんだよ、シーラ。」
「ごめんなさい。
でも、やっといつものランスに戻ったなぁ、って思って。教会から帰ってきてなんだか元気がなさそうだったから。」
ランスォールのぎこちない笑顔にシーラは気付いていた。
知っていて尚、ランスォールに笑いかけていたのだ。「さぁ、じゃあたっぷり休みましょ。
ランス、行こう。」
いつもどおりに笑い、シーラはランスォールの手を引いて出ていった。
だいぶ来た頃、シーラが突然立ち止まり振り向いて言った。
「ランス、私に何か話したい事があるんでしょう?」