暴走した心の歯車は歯止めがきかなくなっていた。
ベッドから無作為に起き上がり、机に置いてあった写真立てを思い切り、床に叩き付ける。
ガシャンッ
鈍い音とともにガラスが砕け散り、
その鋭利な破片は私の頬を掠ったが、不思議と痛みはなく、蔓延した疎外感だけが心を満たしていた。
激しく散乱した、写真立ての中の私は家族に囲まれて、嬉しそうに微笑んでいる。
きっと戻る事がない本当の笑顔。
私の心は虚空(きょくう)の闇で支配され、憔悴(しょうすい)しきっていた
赴ろに手鏡を取り、自分の顔と向かい合う。
…酷い顔だ。
辺りは静まり返っていた。その静寂さがより一層、周りを不気味にさせる。
ふと、時計を見やると、朝の四時半。
寝付けない時の私は必ずと言っていいほど、夜の街を歩く。
だが、今日はそんな気分にはなれない。
何を考える訳もなく、茫然自失(ぼうぜんじしつ)とその場に立ち尽くしていた。
目を伏せると、走馬灯の様に過ぎ去っていく過去の想い出。
しかし、楽しかった想い出も、悲しかった想い出も、辛かった想い出も、全て他人に当て嵌(は)め、現実を受け止めようともせず、自分自身を欺こうとする私がいる。
そうする事で心の平安を保ちたかったのかもしれない。
けれども、いくらそうしたからといって、過去が全て払拭できるはずがないのは解っているはずのに………。なのに……