(お、……すげー自然な感じじゃん)
俺、倉沢諒司は、ギターの石島康介の見慣れた金髪を目の端にとどめながら、派手にチョッパーをかましていた。
不意に康介がこちらを向いて、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
キーボードの峠昭彦は、俺たち二人に眼鏡の奥からウインクをよこしてきた、…が男にウインクされても嬉しくない。
期せずしてして、我々ラットラーの三名の意見が一致したようだ。
品川恵利花は、全身を振り回す勢いで『魅せる』プレイを展開している。
ツーバス(二個のバスドラム)を自在に使いこなす様は、ある不世出の天才ドラマーを彷彿させた…
エリカと音合わせしたのは一曲だけで、その後はなぜか雑談タイムに突入。
「すっげーキレのいい音じゃん、ドラム歴長いんか?」
「ううん、まだ一年ちょっと位かなァ?
前はねェ、ベースやってたんよ二年くらい」
「ほう、諒司クンとまるっきり反対ですね。
彼は元々ドラムで入ったんですよ」
「そうだな、…ベースに転向してから三年位かな?」
と、こんな具合に。
考えてみると、カラオケボックスで歌わずにダベってるみたいなものか……
「ところでよォ、お前ら何で知り合いなわけ?」
「僕も聞きたかったんですよ、それ」
「あ、それはね〜、リョージがナンパ‥ムグ」
「うわっ!やめろってバカ 、んな事いまさら蒸し返してどーすんだよ!」
俺はとんでもない事を言いかけたエリカの口を、必死に押さえていた。