映画は純愛ものらしく、女の子と一緒に観るのは正直恥ずかしかった。
その日は時間も遅く、そのまま何事も無く解散した。それからどちらとも無くメールは途絶えた。
それからしばらくラジオを聞く事に専念し1ヶ月が経った10月のある日、またしてもラジオの映画に当たってしまったのだ。
なぜこうも一緒に行く相手も居ないのに当たるのか、他のリスナーはさぞ彼に嫉妬した事であろう。
こうしてまたしてもピンチに陥った彼であるが当たったと同時に「同じラジオを聞いてる子」というフレーズが頭を過ぎったのだ。
それから慌てた。
試写会まであと1週間も無いというのにまだ連絡先も何も知らないのだ。
急いで連絡をし、なんとかアドレスを教えてもらった。
あとは誘って行くだけなのだが、まともに手さえ握った事の無い彼にとってそれは、断崖絶壁を命綱無しで這い上がれと言うのに等しかった。
「…なんて言おうか、チケットが当たったから?丁度チケットがあるとか今時そんな話しあるか?彼女が欲しいから?…だめだ、そんなんじゃ一緒に行ってくれない…」