きっと諦め癖がついたのも、あの頃だったかと思ってしまうと、少し悲しく、少し懐かしく思う。 「目が見えねぇ・・・ 」 なぜ見えないのか、男は知っている。潰れた眼球を握り締める左手が、それの弾力で押し返される。 「・・・見えなくても、いいやぁ」 これから死にゆくだろうこの男は、いつもどぉりの無気力を一言、うつぶせだった体を引っ繰り返す。 「こんな時代、早くおわればいいのになぁ・・・。」 遠く、どこかにつながっている空を、もう一度だけ見上げたい。かなわぬ想い抱き締めながら、男は意識を静かに落としていく。